コラム

2026.08.13

電子処方箋、クリニック導入率はまだ3割|今から始めても遅くない理由

「電子処方箋、対応されていますか」

産婦人科向け電子カルテの導入や運用に関するご相談をお受けする中で、この話題が出る機会が増えてきました。

デジタル庁の発表によると、医科診療所における電子処方箋の導入率は29.5%(2026年7月31日更新)。

裏を返せば、医科診療所の約7割は、まだ電子処方箋への対応を開始していない状況です。

「今さら手をつけても遅いのではないか」。そう感じている先生に向けて、電子カルテメーカーの立場から知っておいていただきたい情報をまとめました。

先に結論を言うと、電子処方箋は今からでも十分に間に合います。導入率が3割程度にとどまっている今だからこそ、動くだけの理由があります。

産婦人科向け電子カルテを提供する株式会社ミトラが、電子処方箋の基本、導入が進まない背景、そして今始める意味について、システムを扱う立場から整理します。

 

電子処方箋とは何か

制度の概要

電子処方箋は、紙で発行していた処方箋をオンラインでやり取りする仕組みです。

医師がシステムに処方内容を登録すると、患者の同意を経て薬局にデータが届きます。

患者は紙の処方箋を持ち歩かずに済み、薬局側もそのデータをそのまま調剤に活用できます。

この仕組みは、マイナンバーカードを使った「オンライン資格確認」の上に成り立っています。

オンライン資格確認は2023年4月から原則義務化されており、現在ではほぼすべての医療機関で導入済みの前提となっています。

さらに2024年12月には従来の健康保険証の新規発行が停止され、2026年現在は、マイナ保険証(またはマイナ保険証を持たない方向けの資格確認書)の利用が標準的な運用となっています。
電子処方箋も、このマイナ保険証を軸とした本人確認の仕組みを前提に成り立っている制度です。

何が電子化されるのか

電子化される情報は、主に次の3つです。

  • 処方内容(薬剤名・用法・用量)
  • 過去の薬剤情報(処方・調剤情報)
  • 重複投薬や飲み合わせ(併用禁忌)のチェック結果

 

これまで医師や薬剤師がそれぞれ個別に確認していた情報が、システム上でリアルタイムに共有されるようになります。

 

患者・薬局・医療機関の流れ

電子処方箋の流れは、おおむね次のとおりです。

  1. 医師が院内システム(電子カルテ)で処方内容を入力し、電子処方箋を発行する。
  2. 電子処方箋管理サービスへ処方情報を登録する。
  3. 患者が対応薬局へ行き、マイナ保険証による本人確認、または引換番号の提示を行ったうえで、電子処方箋を利用する。
  4. 薬剤師が電子処方箋を取得し、内容を確認したうえで調剤・服薬指導を行う。
  5. 調剤結果を電子処方箋管理サービスへ登録し、医療機関でも次回受診時に調剤済み情報を参照できるようになる。

 

※本画像は生成AIを活用して作成したイメージ図です。

 

 

紙がなくなることそのものより、「情報が医療機関と薬局の間でつながる」点に、この制度の本質があります。

 

導入率はまだ約3割|最新データで見る現状

病院・診療所・薬局で差が大きい

施設の種類によって、電子処方箋の導入状況には大きな開きがあります。デジタル庁「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」(2026年7月10日更新)による施設種別の導入率は、次のとおりです。

 

  • 薬局:90.5%
  • 病院:20.9%
  • 医科診療所:29.5%

 

薬局側の受け皿はほぼ整っている一方、処方箋を発行する医療機関側の対応が追いついていないのが実情です。

とはいえ医科診療所の導入率は、2025年6月時点の19.6%から29.5%へと、この1年ほどで着実に伸びています。

 

産婦人科クリニックではどうか

導入率は、電子カルテを使っているかどうかとも強く関係しています。

厚生労働省が示す最新の方針(第5回電子処方箋推進会議 資料1、令和7年9月29日)でも、すでに電子カルテ情報共有サービスに対応している医療機関には電子処方箋単独での導入を促す一方、電子カルテを未導入の医療機関には標準型電子カルテ等との一体的な導入を促すとされており、電子カルテの有無が導入のしやすさを左右する構図がうかがえます。

産婦人科は、妊婦健診や分娩管理など診療科特有の記録項目が多いこともあり、専用の電子カルテを導入するクリニックが増えています。

すでに電子カルテを使っているクリニックであれば、電子処方箋への対応も他科に比べて進めやすい環境にあるといえます。

 

厚生労働省が示す今後の目標

厚生労働省は当初、「2025年3月までに、オンライン資格確認を導入した施設のほぼすべてに電子処方箋を導入する」という目標を掲げていました。この目標は、達成には至っていません。

 

これを受けて厚生労働省は、医療DXのさらなる推進に向け、電子処方箋を含む医療情報基盤の整備を進めています。

今後は、電子処方箋単体ではなく、電子カルテやオンライン資格確認などの仕組みと連携しながら、医療情報を安全に共有できる環境づくりが進んでいくと考えられます。

医科診療所における電子処方箋の導入率は、2025年時点から2026年7月時点にかけて約10ポイント上昇しており、今後も医療DXの流れの中で普及が進むことが見込まれます。

電子処方箋の導入が進まない理由

電子カルテの導入支援を通じてお伺いする声としても、次のような不安をよく耳にします。

  • 費用がかさむのではないか
  • 今使っている電子カルテとうまく連携できるか
  • スタッフが操作を覚えられるか
  • 運用が変わることへの抵抗
  • 導入初日に診療が止まってしまわないか

 

日本医師会総合政策研究機構の調査でも、機器の準備やネット環境の整備、電子カルテの改修、HPKIカード(医師の電子署名に用いるICカード)の取得など、導入までにかなりの準備が必要になることが指摘されています。

こうした不安は、決して考えすぎではありません。

実際に相応の準備を要する制度です。何から手をつければよいか分からないまま、後回しになっているクリニックが多いというのが実情でしょう。

 

導入準備の段階で課題となりやすいのが、発行までに時間を要するHPKIカード(またはHPKIスマホアプリ)の準備です。

電子処方箋の運用には、医師による電子署名としてHPKI認証が必須となりますが、カードの発行には申請から一定の期間がかかります。

導入を検討し始めた段階で早めに申請を進めておくことが、スムーズな導入開始の鍵になります。

 

 

それでも今始めた方がいい理由

医療DXの流れに乗れる

電子処方箋は、電子カルテ情報共有サービスやオンライン資格確認と並んで、国が進める「医療DX」の柱の一つです。

今後は全国医療情報プラットフォームとの連携も控えており、早めに対応しておくほど、その先の制度変更にも対応しやすくなります。

 

補助制度を活用できる

電子処方箋の導入には、システム改修費用などを対象とした補助金があります。

運営形態や病床数によって補助額・補助率は異なるため、検討の際は最新の内容を確認しておくとよいでしょう。

初期費用の負担を、想定より抑えられるケースもあります。

 

患者サービスの向上につながる

電子処方箋があれば、患者は処方箋を紛失する心配がなくなり、薬局を選ぶ自由度も上がります。

通院頻度の高い妊婦健診が中心となる産婦人科では、この利便性の向上が患者満足度に直結しやすいポイントです。

 

重複投薬・医療安全の強化

処方情報がリアルタイムで共有されるため、他院で処方された薬との重複や、併用禁忌の薬剤をシステム側で機械的にチェックできます。

厚労省の調査でも、電子処方箋導入のメリットとして最も多く挙げられたのは「医療安全・医療の質向上につながる」という点でした。

 

診療報酬上の後押しもある

令和8年度の診療報酬改定で、これまでの医療DX推進体制整備加算は「電子的診療情報連携体制整備加算」へと名称を変更し、内容も見直されました。

 

この加算の算定要件には、電子処方箋の発行・活用をはじめとする医療DXへの対応状況が組み込まれています。

つまり、電子処方箋に対応していないクリニックは、この加算そのものを算定できない、あるいは上位区分での算定ができないという形で、すでに実際の収益に差が出始めているということです。

 

電子処方箋への対応の有無が、初再診料等の点数や経営面にも直結する時代になっています。

経営の観点からも、もはや先送りしにくいテーマになっているといえるでしょう。

 

産婦人科で電子処方箋を導入するメリット

 

産婦人科には、他の診療科とは異なる事情があります。

  • 妊娠中・授乳中の患者が多く、薬剤の安全性確認がとりわけ重要になる
  • 産科・婦人科以外の医療機関を並行して受診している患者も多い
  • 妊婦健診から産後まで、継続的なフォローが必要になる

 

妊婦や授乳中の患者への処方は、他科以上に薬剤選択への配慮が求められます。

電子処方箋による重複投薬・併用禁忌チェックは、産婦人科ならではのリスク管理と相性のよい仕組みだといえるでしょう。

 

また、妊婦健診の合間に内科や皮膚科を受診する患者も少なくありません。

医療機関をまたいだ薬剤情報の共有は、産婦人科の診療において特に価値のある機能だと考えられます。

継続的な診療が前提となる産婦人科だからこそ、電子処方箋によって「かかりつけ」としての情報の一貫性を保ちやすくなる。この点も見逃せません。

電子処方箋と電子カルテはなぜ連携が必要なのか

電子処方箋は、単体で導入しても効果は限定的です。

私たちのように電子カルテを提供する立場から見ても、今後は電子カルテ、オンライン資格確認、電子処方箋を一体として整備していく流れが本格化していくと考えています。

 

  • 電子カルテ: 日々の診療記録や妊婦健診記録を管理する基盤
  • オンライン資格確認: 電子処方箋を導入するための前提条件
  • 電子処方箋: 処方・調剤情報を医療機関と薬局でつなぐ仕組み

 

これらは別々の制度というより、「患者の医療情報を医療機関・薬局の間でシームレスに共有する」という、ひとつの医療DXの流れの中にあるものです。

自院の電子カルテが電子処方箋に対応しているか、オンライン資格確認は整備済みか。

まずはこうした現状を洗い出したうえで、全体設計として導入を検討することが、遠回りに見えて確実な近道になります。

まとめ:まずは現状の棚卸しから

電子処方箋の導入率は、医科診療所全体でまだ約3割(29.5%、2026年7月時点)にとどまっています。だからといって、これから始めるのが遅いわけではありません。

むしろ、電子カルテとの連携を前提に、無理のない形で準備を進められる今は、悪くないタイミングだといえます。

 

株式会社ミトラでは、産婦人科向け電子カルテの提供を通じて、医療DXへの対応や、現場の運用に合わせたシステムのご提案を行っています。

「何から始めればいいか分からない」「今の電子カルテのままで電子処方箋に対応できるのか知りたい」。

そんな段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。


参考資料・出典

本記事の統計データは、以下の公的資料を参照しています。

2026.08.03

コラム

ARTオンライン登録とは?UMIN登録の負担を減らす方法

2026.08.18

展示会

第50回日本女性栄養・代謝学会学術集会に出展いたします。|ブース位置・展示内容のご案内